第53回 日米の金利差拡大と円相場について考える

 アメリカ連邦準備理事会(FRB)は、3月15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、3カ月ぶりに利上げを決めました。利上げ幅は0.25%で、短期金利の指標「フェデラルファンド(FF)金利」の誘導目標を年0.50~0.75%から年0.70~1.00%に引き上げました。2017年中に追加の利上げも示唆しており、金融緩和を継続している日本との金利差は拡大傾向にあります。
■金利差拡大でも円安が進まない理由
 アメリカが利上げを決めた背景には物価の上昇があります。

 米商務省が公表した2月のPCEコア・デフレータ(個人消費支出物価指数)は、前年同月比1.8%上昇し、FRBがインフレの目標としている2%に近づいています。一方、日本の2月の消費者物価指数は前年同月比で0.3%、生鮮食品とエネルギーを除くと0.1%の上昇にとどまっています。

 日米間の金利差が拡大しているにもかかわらず円安が進まない理由は、名目金利から物価上昇率を差し引いた「実質金利」にあります。

 物価上昇率が顕著なアメリカに対して日本の物価上昇率は低いため、実質金利は日本がアメリカより高くなる可能性があります。さらに、アメリカではインフレが継続するとみられている一方、日本は再びデフレに突入すると考えられており、その見方が多数派となれば、その差は拡大していきます。

 例えば、現在のレートを「1ドル=100円」とし、1個100円のハンバーガーを購入するとしましょう。「10年後、物価が上昇するアメリカではハンバーガーが150円になり、物価が上昇しない日本では100円のままで販売される」となれば、10年後、1ドルではハンバーガーが買えませんが、100円では買えることになります。つまり、資産を増やすには、今のうちに「ドル」から「円」に替えておいたほうが有利ということになります。

 日米の金利差が拡大しても円安が進まないのは、日本がデフレへ後戻りすると予想する投資家が多いということを暗示しているほかありません。
■リスク回避の円買い。円は安全資産なのか?
 日本の借金は1000兆円を超え、経済危機がささやかれたギリシャの債務残高を大きく超えています。一方で、世界で紛争が起きるなどリスクが高まると円高になり、「安全資産の円が買われた」などのコメントが聞かれます。東日本大震災の際には、日本が大きな被害を受けたにもかかわらず円は急騰し、1ドル76円まで円高が進みました。

 このように、有事の際には必ずといっていいほど円高が進みますが、その理由については「日米の金利差」や「日本の海外純資産残高の高さ」が考えられます。

 金融緩和を続ける日本の金利は低いことから、円を借りて米国などに投資する「円のキャリートレード」が行われています。ただ、ひとたびリスクが発生すると投資規模が縮小されるため、海外で運用している資産を売却して円に替えて返済する必要性が生じます。その結果、円高になりやすいと言われています。

 一方の「対外純資産残高」とは、政府や個人が海外で保有している資産から負債を差し引いた残高のことで、財務省によると平成27年末で339兆2630億円でした。対外負債の増加額が対外資産の増加額を上回ったため、前年比で5年ぶりに減少(前年比24兆円減))しましたが、残高は世界一の水準です。そのため、リスクが発生すると海外資産を円資産に替える動きが加速し、円高になりやすいといわれています。