第119回 重篤な副作用がある薬剤の使用で生じた判例

 不整脈の持病があった患者が、アンカロン(アミオダロン)を約1年3カ月継続し、その約3カ月後に別の病院で胸部レントゲン撮影をしたところ、異常が見つかったため投与は中止されました。その2カ月後に患者は死亡したことから、患者遺族はアンカロンの副作用である薬剤性間質性肺炎に対する検査義務があったにもかかわらず、これを怠ったとして損害賠償を求めました。
【事例紹介】
大阪地方裁判所 平成26年9月1日判決 損害賠償請求事件
 不整脈であった患者(当時73歳)は、平成19年12月から平成21年3月まで被告医院に通院し、1日2錠のアンカロン(アミオダロン)を処方されていました。この期間、平成20年1月に胸部X線撮影をした以外、聴診器で呼吸音を聴取するだけでした。

 平成20年12月に喉の痛みなどを、平成21年3月には階段の昇降時に息苦しさを訴えた患者は、アンカロンの服用を1日1錠に減量するよう主治医に訴えました。その3カ月後の平成21年6月に別の病院で胸部X線撮影検査を受けたところ、間質性肺炎の疑いがあることが分かり、アンカロン投与は中止されましたが同年8月に患者は死亡します。
【判決と考察】
 争点は、「アンカロン投与中の検査義務違反の有無」と「死亡との因果関係の有無」です。

 裁判所は、患者には不整脈があり、アンカロン以外の抗不整脈剤の投与では症状が改善しなかった事実から、投与は中止すべきではないとしました。一方で、アンカロンには薬剤性間質性肺炎という重篤な副作用を引き起こす危険があることから、投与の際は、患者の状態をたびたび観察するとともに、胸部X線検査、胸部CT検査、眼科検査、および各種の臨床検査を投与前と投与開始1カ月後、投与中は3カ月ごとに行うことが望ましいとされていると言及しました。

 被告病院は患者にアンカロンを継続的に処方しており、患者には平成21年4月頃には146gのアミオダロンが蓄積していたと認定。アミオダロンの累計の蓄積量が101~150gになると、薬剤性間質性肺炎の発症頻度が高くなるとの報告もあることから、この頃には副作用による薬剤性間質性肺炎が発現していたと認定。検査義務違反と死亡との因果関係を認め、約1830万円の損害賠償を命じました。

 致死に至る重篤な副作用がある薬剤を使用する場合、重視すべきなのは当該薬剤の添付文書の記載です。最高裁は1996年の判決で、添付文書に記載された使用上の注意事項に従わずに医療事故が発生した場合は、合理的な理由がない限り過失が認定されるとしています。添付文書の確認とそれに沿った使用が重要なのは言うまでもありません。