第106回 賃金未払いの救済

 法人の倒産には、破産や民事再生などさまざまな形態があります。事業の継続を前提に立て直しを図る場合は、民事再生手続きが進められますが、事業の継続が困難な場合は、破産という選択肢が一般的です。

 いずれも資金繰りに行き詰れば従業員への賃金の支払いが困難になるため、従業員の未払い賃金については一定条件のもとで救済が図られています。
■申し立てから手続き終結まで
 破産の場合、破産手続き開始の決定が下されると、債権者は破産管財人が定めた期間内に、破産債権を申し出なくてはなりません。従業員に対する未払い賃金があれば、それらは破産債権となり、残された財産から配当として支払う必要があります。

 法人の倒産で賃金が支払われないまま退職した従業員には、「独立行政法人労働者健康安全機構」が未払い賃金の一部を立て替える「未払賃金立替払制度」が利用できます。ただし、以下の条件を満たす場合に限られます。

 破産した法人の条件は、「1年以上事業活動を行っている」「破産、特別清算、民事再生、会社更生したこと、あるいは事実上の倒産をしたこと」という2つです。破産や特別清算、民事再生、会社更生の場合は、破産管財人らに倒産の事実などを証明してもらう必要があり、事実上の倒産状態であれば、労働基準監督署長の認定が必要になります。

 従業員の条件は、「破産手続きの開始の申立て日や認定申請日から6カ月前を起点にして、2年間の間に退職をした従業員」となります。

 立て替え払いの対象となる未払賃金の範囲は、従業員が退職した日の6カ月前から請求日の前日までに支払期日が到来している毎月の給料と退職手当で、総額の8割になります。年齢によって上限が設定されており、30歳未満が88万円、30歳以上45歳未満が176万円、45歳以上が296万円となっています。ボーナスや未払い賃金の総額が2万円に満たない場合、立て替え払いの対象にはなりません。
■未払い賃金の支払いは慎重に
 労働者健康安全機構が立て替えた賃金は、債権として機構が法人に請求します。

 事業の継続が困難になると、事業主は従業員に対して賃金だけは先に支払ってあげたいという感情を抱きがちです。しかし、破産手続開始決定前に処分された財産は、通常、破産債権者に配当されたと思われ、否認権を行使することで破産財団(破産管財人に管理および処分をする権利が専属するもの)に組み入れることもできます。未払い賃金を他の債権者に先んじて支払うと、破産管財人から否認権を行使される可能性もあります。破産手続開始の申立て前の未払い賃金の支払いは、立て替え制度を念頭においた上で、慎重な判断が必要です。