第29回 ゾーニング計画①

 敷地内や建物内での想定規模を伴った機能配置を定めることを、「ゾーニング」と言います。病院のゾーニングではまず、病棟部の配置計画・平面計画の検討から始めるのが一般的です。病棟部は最も大きな面積を占める病院の基準階であり、そこで決定した柱の間隔や垂直動線の配置は病院全体に展開され、他の部門の配置計画に大きな影響を与えます。
■時代や規模に応じて変わる病院の配置
 病院のゾーニングは建築計画上、大別して各部門を平面的に分散配置する方法と垂直に積層配置する方法があります。

 明治から大正に至る黎明期の病院では、木造1階から2階建ての複数の施設を並べたパビリオン型(並列型)が主流でしたが、関東大震災を契機に鉄筋コンクリートによる耐震耐火構造の普及とエレベーターの導入、大都市での敷地の狭隘化などにより、積層型が増えてきます。戦後、国民皆保険制度導入(1961年)以降に新設された多くの病院では、積層型が主流となっています。

 300床未満の病院に多く見られるのが、積層型の一種で低層階に管理部や外来、診療部、供給部などが配置され、そのすぐ上層階が病棟になっている「基壇堂塔型」、300~500床の公的病院や一部大学病院で多く見られるのは、低層階に外来、診療部、供給部、管理部が配置され、4部門とは別塔に病棟だけが集約される「病棟集約型」です。500床以上の大規模病院で敷地に余裕がある場合(都心以外)は、「多翼型」が取られる場合も少なくありません。これは字のごとく翼のように各部門が分かれ、メインの動線で結ばれている形です。

 外来部や診療部を設置する下層階は、患者数や手術件数の増加、新しい診断機器の導入などに備え、最初のゾーニング計画では拡張余地も残し、増築可能な構造としている例もあります。都心部では規模に関わらず、各階の床面積を共通とした塔型の高層建築物となる傾向で、この場合は、病棟部に最初に予定していた看護単位が基準階の面積に収まるか否かが効率的なゾーニングポイントとなります。
■外来・救急のゾーニングポイント
 それでは、各部門のゾーニングポイントを見ていきましょう。

 まず外来部ですが、ここは診察室、処置室とその付属室、それらに隣接する待合室などから成り立ちます。受付や会計から近く、患者がアプローチしやすい1階を中心に低層階部分にまとめます。外来部の規模設定では予想される1日当たりの外来患者数がポイントとなります。外来率(1日外来患者数÷病棟数)は、郊外立地でおおむね1.0~2.0、都心立地では2.0~3.0に分布しますが、家族との付き添いなどを考慮すると、実際の来院者数はこれより3~5割多くなります。来院者数のピークは外来診療開始から1時間前後で、この時点で1日の外来患者数の6~7割が受付を済ませている例が少なくありません。

 待ち時間が短いに越したことはありませんが、現状を考えると、不安を抱えながら長時間待っている患者やその家族が、少しでも快適に過ごせるように工夫する必要があります。待合いホールはゆったりとしたスペースを確保し、採光や照明にも配慮し、イスも立ち上がりやすく、体調が悪い時は横になれるタイプが望ましいでしょう。

 レストランや喫茶店なども待合の近くに設置し、外来が上下階にあるときは吹き抜けにして視覚的に一体化したり、エスカレーターで上階にアクセスしやすい設計を図ったりすることも大事です。

 救急部も外来の一部ですが、24時間使用という点が異なります。搬送された救急患者の診断・治療を敏速に行うためにはCTやMRIといった画像診断部や手術部、ICU(集中治療室)、CCU(冠動脈集中治療室)、当直室などへの動線が最短となるよう配慮する必要があります。
■供給部のゾーニングポイント
 供給部は病院のなかでもっとも出入りが多いので、1階を中心とした上下階、すなわち外部からアクセスしやすい場所に配置します。特に機械室、厨房、SPD(供給センター)などは1階に配置されるのが理想で、外来部とその関連機能を優先することが大切です。

 建築面積の制約が大きい場合は、サービスヤードやマシンハッチ(大型設備機器の出し入れ)、垂直動線などの工夫により、地階もしくは2階に設置される事例もあります。同じ供給部でも中央材料部は手術用機材の洗浄・滅菌・保管を主業務としていることから、手術室に隣接して設置し、他の部門の器材や外部からの搬入には垂直動線(ダムウェーター・エレベーター)を使用する場合が多いようです。